この連載の記事
1. 他人事はどこにもない──「私たち」の中の私
今考えていることを月に1・2回書いてみませんかというお誘いを受けて、すぐに浮かんだのが「他人事はどこにもない」という言葉でした。
2. 私たち生きもの
もう一度図1を見て下さい。すでに述べたようにここでは一番外側にある「私たち生きもの」から考え始めましょう。
3. 体内常在菌叢とウイルス叢を入れての「私」
「私たちの中の私」として自身を捉えていく時、まず「生きものという私たち」から始めると空間的にも時間的にも広いところに自分を置くことができ、大らかになれると思いますというところで前回は終わりました。
4. 私たち生きものが示す長い時間
「私たちの中の私」という時の「私たち」を、この言葉からすぐに思い浮かべられるであろう「私たち日本人」や「私たち人間」ではなく、まず「私たち生きもの」というところから始めたところにこの連載の特徴があります。ここから始めたのは、COVID-19のパンデミックや異常気象に対処し、新しい社会を作っていく「私」には「私たち生き
5. 他をとり込んで新しくなっていく私
「私たち生きもの」というところから始めると、生きものたちは38億年という長い時間をかけて基本的には同じしくみを維持しながら続いてきたのであり、私たち人間もその中で生きる存在であると考えられるようになって広い気持ちになれると先回書きました。
6. 「私たち」の中の私 ──私としての人間登場
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックという
7. 「私たち家族」の中の私への道
「私たち生きもの」という仲間としてさまざまな生きものたちがそれらしく生きているのが地球という星です。私たちでありながら決して皆が同じではなく、アリはアリらしく、ライオンはライオンらしく生きているという多様性が「私たち生きもの」の特徴です。しかも一方ですべての生きものがつながりを持ち、それは私という存在が孤立したものと
8. 「私たち家族」のメンバーは?
先回「私たち生きもの」の中の人間の暮らし方の特徴として「私たち家族」という課題に入りました。私一人が孤立するのでなく、皆と一緒に暮らす姿の基本型が家族です。近年、社会のありようが変化し、家族の姿も複雑になってきています。規格のある機械を見慣れている現代社会では、物事には規格があると考える癖がついています。生きものの世
9. 「私たち家族」の基本にもどって ─ 共食
「私たち家族」を考えようとしてふとまわりを見まわすと、親類や知り合いの中に家族の中心にワンちゃんがいる家が少なくないものですから、そこから入りました。私はイヌ好き・・・というよりイヌに仲間と思われている節があるのですが、最近は仕事の関係で家にいないことが多かったので、家族になるのを我慢しています。
10. 「私たち家族」の基本にもどって─子どもを育てる
先回は、皆で一緒に食べることが協力や話し合いを生み、そこにいる一人一人にとっての楽しい時間となっていく様子を追いました。このようにして、「私たち家族」に始まり、仲間意識が広がっていく中で人間生活が営まれてきたと考えると、改めて人間っていいなという気持ちになります。
11. 人間という仲間──ホモ・サピエンスへの道
「私たち生きものの中の私」から始まり、数千万種もいるとされる生きものの中でヒトという生きものが持つ特徴に注目しながら、私の生き方を探る旅は一息つきたい場所、ホモ・サピエンス登場のところまできました。ここで、これまでの道のりを簡単に振り返りましょう。
12. 明確になる人間らしさ──認知革命
生きものという仲間でありながら二足歩行をすることによって独自の道を進み始めた人類は、共に食事をし、皆で子育てをする家族から、狩猟などで協力する共同体を作って暮らす、人間らしい暮らし方の底にある、共感する能力を持ち続けながら進化をし、ホモ・サピエンス、つまり現代を生きる私たちそのものが生まれるところまで来ました。ここか
13. 人間らしさを見つめて──言葉の周囲を巡る
「私たち生きもの」の一つであるヒトが、現在の私たち、つまり文化・文明をもつ人間という存在でもあるというこの重なりが生まれたのが、7万年ほど前に起きた「認知革命」です。これ以降は人間独自の歴史の時代に入るのであり、その変化の中で最も注目すべきものである言葉がどのように生まれたかを見てきました。言葉の誕生についての決定的
14. 人間らしさと私たちという意識──芸術への道
文化・文明をもつ私たち人間はヒトという生きものであり、「私たち生きもの」という感覚を持ち続け、それを基に社会を組み立ててこそ、一人一人が本当に生きていると実感できる状況をつくれるのではないか。そう考えています。
15. 人間としての歴史が始まる──虚構の中で
数千万種もあるとされる生きものたちの一つである人類が700万年ほど前に生まれ、その後さまざまな人類へと進化しましたが、その中で私たちの祖先であるホモ・サピエンスだけが生き延び、今に続いています。つまり今の地球にはヒトは一種しかいません。
16. 狩猟採集という生き方を現代から見る
38億年の歴史をもつ生きものたちの一つとしての人間が、「私たち生きものの中の私」を意識しながら、「他の生きものたちと連続しながら不連続」という特殊性を生かした暮らし方を探ることになりました。本連載では、科学技術社会である現代社会のもつ問題点を見直したいのですが、そのような社会はこの100年ほどのこと、長く見つもっても
17. 人間社会の始まり──狩猟採集生活でのアニミズムとその現代的意味
生きものとしての連続性と人間独自の特徴に注目した時の不連続性とが重なり合う中で、不連続性の方が少しずつ目立ち始めていくのが認知革命以降の生活であり、それが現代にまでつながってきます。いよいよホモ・サピエンスという生きものが人間として生きる過程を見ていくことになります。くどいようですが、「私たち生きものの中の私」という
18. 人間として生きる──物語の必要性
私たち生きものの仲間でありながら、人間としての独自の生き方を始める中、生活の基本である食べることと関わってどうしても浮かんでくるのが生と死の問題でした。生きていくためには他の生きもののいのちを奪い(これが気になるので、私たちはいただいているという言葉を使いますが、いのちが消えていることも確かです。これが生きものの宿命
19. 農耕へ向けて──生命誌による物語を持ったうえで
多様な生きものの一つとして生きる狩猟生活の中で、少しずつ他の生きものにはない人間としての特徴を示していくホモ・サピエンスの生き方を見てきました。そこで、生まれてきた人間らしさの一つとして、心のはたらきであるアニミズムについて語り、それは古代人特有のものではなく、現代を生きる私たちの心の中にも存在することを指摘しました
20. 農耕社会への移行──拡大志向への疑問
狩猟採集から農耕へというサピエンスという生きものだけが歩んだ独自の道が文明を生み出し、それが大きく展開して生まれた科学技術文明を持つ現代人は我が世の春を謳歌してきました。けれども21世紀が始まった今、文明の未来はなんだか危うい状況になっているのではないでしょうか。サピエンスに未来はあるのか。誰にも予測できることではあ
21. 農耕を始めたサピエンス──土に注目する
農耕についてあれこれ検討してきましたが、サピエンスとしてそれを始めるか否か。そこに選択の余地はありません。食べることは生きることとイコールと言ってよい行為です。もちろん、芸術はあってもなくてもよいものではありません。学問だって、もしそれがなかったら私たちの生活はどれほど味気ないものになるだろうと思います。それらはいず
22. 現代社会の課題解決を求めて──土に注目する
「私たち生きものの中の私」として生きる生命誌の物語(世界観)で社会のありようを考えていくと、農耕について考えるところから始める必要があり、そこで注目すべきは「土」であるというところまできました。
23. 農耕社会への移行──手なずけることの意味
現代社会の課題解決を求めて、歴史を探り未来に思いをはせるなら、農耕に真剣に向き合い、それをどのように進めるかを考えることが大事……というよりそこにしか解決の道はないという立場で、模索を続けてきました。
24. 土からの展開――農業、土木、環境
狩猟採集という、ヒトという生きものとしてどう生きるかを求めての暮らしは、それなりに豊かなものであったことが分かりました。そこから、人間という独自の道を歩んだ農耕に始まり、現代社会に到る道を見た時、生命誌としてはどうしてもこれを見直したいと思わざるを得ません。宮沢賢治の言葉を借りるなら、今歩んでいる道が「ほんとうの豊か
25. 土を意識し続ける新しい文明を求めて
地球上で豊かに暮らし続けるために現代文明のありようを見直すなら、農耕の始まりに問題があったということが見えてきました。それを土から考え直すことで、土木・環境ともつながる文明全体の見直しができるはずであるという見通しも立ちました。このような見直しに必要なのは、拡大・成長・進歩と支配・征服・操作からの脱却です。これらは、
26. 一応のまとめとこれから
最近思うことを2年間にわたって記してきました。まだ思考の途中であり、まとまった形ででき上がったものになってはいません。ただ、まだまだ考えなければならないことがたくさんあり、長くなりそうだと感じ、2年という区切りで一度止め、これまでのところをまとめてからその先を考えたいと思うのです。そこで、これまで書いてきたことを振り