この連載の記事
1. 憲法と特殊日本的なもの【前編】
江藤祥平
憲法学という学問は、国家の存立を前提とする学問です。一般的に憲法は統治機構という政府の仕組みの問題と、表現の自由や経済的な自由といった人権論という二つの領域に分かれます。このうち憲法学は特に前者の国家学と密接な関係にあります。およそ国家が存在するところに、憲法は存在します。そこでまずは、国家を成り立たせる上で、憲法が
2. 憲法と特殊日本的なもの【後編】
江藤祥平
こうして敗戦を経て日本の戦後は始まります。まず問題になったのは、新しい憲法をつくる必要があるかどうかです。というのも、明治憲法には先ほど述べたとおり、立憲学派と神権学派という二つの見方が混在していましたので、一度は潰(つい)えた立憲学派を復興することにより、憲法は変えずに運用を変えることで対応できると考えた論者も数多
3. コメント
松平徳仁
まず、先ほど江藤先生のお話にあったように、論理的に先行する憲法によって国家がつくられるというのは、ノモス(規範)におけるフュシス(自然)の実現という、古代ギリシア以来の思想史的系譜をひくものではあります。しかしその議論は近代になって、国家三要素(国民、国権、国土)という客観的な要素と、集団的自己決定という主観的要素に