人間とはどのような「システム」なのか
西垣 通
撮影:薮崎 めぐみ
AI(人工知能)が席巻する現代社会。歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリはその先に、アップデートされた一握りの超人(ホモ・デウス)とその他大多数の人びと(無用者階級)からなる超格差社会の到来を予測しました。それを信じるかどうかはともかくとしても、情報技術のめざましい進歩の裏で、いま、人間や社会の本質が改めて問われているのは確かです。われわれは一体どのような存在であり、AIや機械とは何が違うのか。情報を生み出す源泉、情報伝達のしくみ、そしてハラリの未来像を避ける方途について、情報学者の西垣通先生にお聞きしました。(全5回)
この連載の記事
1. 「ホモ・デウス」の降臨
――人類が一握りの超人(ホモ・デウス)と大多数の平凡で貧しい人びと(ユースレス・ピープル)に分かれるというユヴァル・ノア・ハラリの未来像は、危機感をあおられつつも、どこかSFの世界の話のようにも聞こえるのですが、この議論の前提になっているものは何だと思われますか。
2. 生物とは何か
――サイバネティック・パラダイムの起源である「サイバネティクス」という学問はどのようにして始まったんですか。
3. 生命、社会、機械
ここまでは一人の人間とか一匹のイヌという話でしたが、そういった個々の生物がオートポイエティック・システム(APS)だとすると、一人ひとりの人間(の心)によって構成される社会もそうではないかという議論が出てきます。
4. 情報伝達とは何か
情報が文字やデジタルデータといった「機械情報」である以前に、個々の生物の主観的な意味にもとづく「生命情報」であるとすると、次に問題になるのは、その意味を含んだ情報がどのように伝達されるかということです。この問いに答えるのが、基礎情報学の「HACS(階層的自律コミュニケーション・システム Hierarchical Au
5. 「AI信仰」の落とし穴
――AIがここまで騒がれるようになったのはここ数年のことだと思うんですけど、そもそもAIというのはどのようにして生まれたんですか。