――天の川っていうのは、私ちゃんとわかってないんですけど、銀河系が見えているんですか。
そう。天の川銀河という言い方もします。要するにわれわれが住んでるから特別な、特別なっていうか、地球がある銀河のことです。これを銀河系、「The Galaxy」というふうに、「the」を付けて表現します。
――「the」が付くんですね。
「the」が付くから銀河系というふうに言って、あとは「銀河」に「系」を付けずにただの「galaxy」と言います。
――銀河系の中には何個ぐらいの星があるんでしょう。分からないぐらいですか。
銀河系にはおよそ2000億個の星が集中しています。
――2000億!
で、星の7割から8割は連星だと言われています。連星というのは、こう、星同士がグルグルお互いに回りあっている。星は一個一個ぽつんと存在するよりも、周りに仲間を引き連れていることが多い。大体10分の7か8ぐらいは連星だろうと考えられています。
――それはニコイチってことですか。
2個、あるいは3個の場合もあるけどね。太陽のように輝いてる星同士が万有引力でつながっている。で、輝かない惑星を引き連れているのも10分の1ぐらいあると考えられています。だから2000億個の10分の1、200億個ぐらいは太陽系のようなものがあるだろうと思うわけです。
――結構あるんですね。
多いですよ。で、その中で今度は地球のような星が何個あるか考えると、太陽系には惑星が8つでしょう。そのうちの一つが地球だから8分の1、それでだいたい10分の1ぐらいだと思うわけです。
――200億の10分の1が地球に近い。
だから20億。20億個の地球があると思っていい。割に多いんですよ。で、生物はどのぐらいでいるかというと、今度は地球を手本にすると、地球は誕生から46億年たっています。そのうち生命がいたのは38億年。38億年前の生物が初代だと言われています。もちろん、もっと前があるかもしれないけどね。いちおう46億年の地球の歴史のうち、38億年は生命がいたとします。
――46億分の38億。
その割合で生物がいる。だから20億掛ける46分の38でなんぼぐらい? 17~18億個くらいなのかな。だから割と地球のような星がたくさんあって生命も多くいる。ただ、そのほとんどは原始的な生命体ですよ。
――ミジンコみたいな
ミジンコより、もっと、単細胞の
――バクテリア?
バクテリア。地球に生命が生まれた38億年前というのはバクテリアなんですよ、ほとんどが。で、生命が地上に進出したのは4億年ほど前。38億年から4億年ぐらいまでの34億年の間はずっとバクテリアのような生物で、海の中にいた。だから、ほとんどの地球のような星に生物がいるとしたら、バクテリアのような生命でしょう。
地上にいるのは46億分の4億、だいたい10分の1。だから20億個ある地球みたいな星の10分の1、2億個くらいの星では地上に生物がいる。
――それでもけっこうな数ですね。
でも、これが文明ということになると……。地球がいまのような近代文明を持ったのは、46億年のうち200年ですよ。ということは、宇宙人になると、20億かける46億分の200としないといけない。
――一気に減りますね。
すると86~7。100足らず。
――ということは、銀河系にある2000億の星の中の100個ぐらいには私たちと同じくらいの文明をもった生命体がいる。
いるでしょうね。
――これがじゃあ出会う確率となると…
出会う確率はもうほとんどゼロ。
――そうですか……
銀河系は平べったい円盤のような形をしているんだけど、その半径は3万光年くらいなんですね。で、その中に生命体がいる100個の星をバーッとばらまいたら、どれくらいの間隔になるかというわけ。そうするとだいたい3000光年になる。
――3000光年。光の速さで3000年。いま21世紀だから、じゃあ50世紀ぐらいになったら出会えるかもしれない。
光の速さで飛べればね。
――そうか、そもそも光で飛べないですもんね。
宇宙人っていうからには、「モノ」として来んといかんわけでしょう。そうすると、その「モノ」を運ぶ速さがどれぐらいか。今のロケットはどれぐらいの速さかっていうと、1秒間で30㎞飛ぶわけですよ。
――30㎞!
すごいでしょう。パーンという間に30㎞。確かにそれはすごいんだけど、じゃあ光はといったら1秒間に30万㎞。1万倍。つまりロケットは光の1万倍時間がかかるわけ。
――3000光年ということは、3000万年かかる。
それを考えると、やって来られないでしょう、というのが、普通の天文学者の計算です。で、さっきの100個あるっていうのも、それは多すぎだよっていう人もいます。たまたま地球が非常にうまい条件を満たしたのであって、銀河系の中に1個しかないって言う人もいれば、10個ぐらいだって言う人もいます。でも私は大体100足らず、50個から100個の間ぐらいだと思っています。ただし、それでもお互いに行き来することはできない。
――ちょっと残念ですね。
人が行き来するというよりは、光をやりとりするというほうが可能性は高いわけです。それはSETI(Search for Extra-Terrestrial Intelligence)と呼ばれていて、地球外文明との電波による交信のことです。
――電波を送って返ってきたら何かがいるんだってことですね。
それでも3000光年だと3000年かかるからね。人間が待てるのは10光年とか100光年くらいまでかな。地球から1光年の範囲には星がないんですよ。
――1光年の範囲には全然ないんですか! 太陽系以外の星はない?
一番近い星で3光年です。いま太陽系以外の惑星がさかんに見つかっていて、もう3000個くらいかな。それは40光年とか1000光年くらいの範囲内見つかっています。ちょっと前にNASAが発表したの(※)では7つの惑星が恒星の周りを回っていて、そのうち地球のような惑星が3個ありましたね。距離は40光年くらい。
――じゃあ比較的
近い。あれでおもしろいのは、地球のような星がなんで3個もあるかということ。その理由はね、真ん中の星がわりと暗いんですよ。太陽のように明るいと、内側の惑星は強く照らされて水が蒸発しちゃうんだけど、暗いから蒸発せずに水が残っている。逆にそれが暗すぎると今度は水が凍っちゃう。だから、3個の地球型の惑星があるというのは、水が液体で存在できる惑星という意味です。
――そういうことですか。でも、40光年だったら電波が届くかもしれないですね。
届くかもしれん。でも文明はなさそうですね。
――そうですか。
文明があったらすぐ分かると思う。逆に宇宙人がわれわれ地球人を探す、文明を持った生命体を探すとしましょう。そうしたらたぶん電波を調べると思うんですね。地球のまわりには、ワーッと電波が漏れているわけですよ。われわれが電波を使いまくっているから。で、それは人間しか使わない、つまり自然界に存在する物質から出るような電波ではないから、それが検出できたらすぐに、あそこに人間のようなものがいるということが分かる。実際、そういう方法で文明探しをしてる人もいます。
――なるほど。じゃあ今回NASAが見つけた星からは、そういう電波までは。
ないでしょう。
――宇宙人の発見まではもうしばらく時間がかかりそうですね。
(取材日:2017年4月4日)
※:2017年2月23日のNASAの発表 出典:NASA(NASA Telescope Reveals Largest Batch of Earth-Size, Habitable-Zone Planets Around Single Star)