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1. 空海の言語思想
――ご著書『思想としての言語』(岩波書店)では最初に空海を取り上げておられますね。空海の『声字実相義(しょうじじっそうぎ)』は以前、
2. 「忘れられた言語」
――次に先生のご専門である中国哲学の思想家、王弼(おうひつ|226-249)の言語思想についてお聞きしたいと思います。私は禅に興味があるのですが、以前読んだ本の中に「意を得て言を忘る」という荘子の言葉が引用してあって、それがなぜかすごく印象に残っていたんです。
3. 普遍と規範
――言語や存在といったものを考えていく上では、「普遍」というのが一つのテーマになるように思います。ここまでのお話ですと、空海は真言という「聖なる言葉」に仏という普遍への道を見出し、王弼は逆に言葉を忘れることで聖人の意という普遍に到達しようとしたわけですよね。先生は『思想としての言語』の中で「普遍化可能であること」と「普
4. 道とは何か
――『思想としての言語』によると、井筒俊彦は神秘が成立する条件として、道(=究極の実在)に向かう「向上道」と、到達した道から戻ってくる「向下道」の二つが必要だと言っているそうですね。以前、小川隆先生からお聞きしたお話では、禅の語録にも悟って終わりではなく、悟りの世界から戻ってきて修行を続けなければいけないといったことが
5. 人の資本主義
――最後にもう一度、普遍についてお聞きしていきたいと思います。ここ最近のヘイトスピーチの問題や、男女格差の問題(編注:世界経済フォーラムによる「ジェンダーギャップ指数2021」で日本は120位)を見ていて思うのですが、日本で人権意識が高まっていかないのは、日本人が普遍(普遍化された人権)をイメージできないからじゃないか