国会は日本国憲法で定められた唯一の立法機関です。しかし実際は、国会で制定される法律のほとんどは行政機関である内閣から提出されたもので、国会議員の起草による法律は全体の二割ほどしかありません。

 「だったら国会なんてなくても、最初から内閣が法律をつくればいいんじゃないの?」 いえ、ちょっと待ってください。国会には法案を起草するだけでなく、内閣の出してきた法案を審議して修正を加えたり、却下できる権限があります。もしも国会がなくなれば、その時々の内閣に都合の良い法律が、誰のチェックも受けず、私たちの知らないところで成立してしまうことになるのです。

 国会がこのチェック機能を十全に果たすためには、特に、野党の役割が重要です。内閣は与党の議員によって組織されるため、与党は内閣の法案に反対しづらいからです。しかし、野党がいくらポイントをついた質問で内閣を追及しても、はぐらかされたり、無視されてしまったらそれっきり。数で劣る野党には、どうすることもできません。野党の発言をメディアが取り上げ、それを見た国民が「確かに野党の言う通りだ。政府の言っていることはおかしい!」と声をあげることで、はじめて、国会の審議は意味を持つのです。

 憲法には、また、国会は国権の最高機関であると書かれています。その理由は、国会が主権者である国民の選挙によって組織されるからに他なりません。国会に力を与えているのは、私たち一人ひとりなのです。「どうせ変わらない」とか「投票したい政党や候補者がいない」とあきらめるのではなく、少しでも共感できる人を選び、国会へ送り込む。それは権利というより、むしろ、私たち自身の未来に対する「義務」なのではないでしょうか。