この連載の記事
1. 他我問題
――「独我論」というものを初めて知ったときに恐ろしい、というのとはすこし違うんですけど、いま立っている足元が揺らぐような、すごく奇妙な感じがしたんです。この世には自分しかいないかもしれない、他人は存在していないかもしれないなんて、絶対そんなはずがないのに、理屈上それを否定することはできない。それがなんて不条理なんだろう
2. 空間・身体・対象
じゃあどうするかというと、ここからはなかなか難しい哲学の話になっていくんですけど、いま持っている常識、つまり、ただ一つの客観的世界の中に私たち一人ひとりが生きているという考えを投げ捨てて、ゼロから考え直してみましょう。まず私は刺激の場の中に生まれる。
3. 私とは何か
――「眺望論」の同じ場所に立てば同じものが見える、同じ眺望が得られるというのはとてもわかりやすいですね。それで思い出したのは、姫路駅のホームに「ここから姫路城が見えます」という看板があって――いまもあるのか分かりませんが――、そこからだとちょうど建物の隙間にお城が見えるんです。それは私が見るとか、あなたが見るというのと
4. 世界と心
――さっきのX線写真の例でちょっと思ったんですけど、画像診断の専門家の目に現れるX線写真は、その意味づけを私とは共有していないということなので、それはその専門家の心だということになるんですか。