「会った瞬間に、こんなこと言ったら失礼だけど、てめえが今、低カロリー、言ってる場合じゃねえよ」、「低カロリーってのは、おかしくないだろ」、「正しいこと言ってねえよ、おかしいよ、てめえ、何言ってんだよ」、「クリームレモンソーダって、最初から、ずーっと注射打ってるんだけど、どういうこと?」、「クリームレモン注射ですか?」、「注射じゃないの?」、「え? あ、なんだっけ?」、「わかんない、わけない」、「クリームセモンローダって注射?」、蜜柑の皮を、剥きながら、薄笑い、している、類いの、錆びた、身づくろいの、背蟲の、畳まれて、風呂敷に、包まれてしまった、死骸の、夏を、失神したり、しゃぶったり、目玉をつけたり、誰かの、形見なのか、奇妙な、速度で、背丈が、伸びている、呆けた、口から、膨らんだ、笑いの、風船の、目も、鼻も、眉も、ばらばらに、擦れて、酢漬けに、された、顔の色も、目の裏で、産まれて、形になれなかった、昏い、記憶に、溶けてしまって、見慣れた、破壊が、足の裏で、青空を、潰しながら、夏に、穴を開けたり、している、「着物、着てたんだけど、酔っ払って、全然覚えてないんだけど、なんか意識がなくて、駅の近くで、バタンと倒れて」、「頭からガンガン、血が出て、で、ここ、縫ったの」、「酔っ払いすぎて、息で頭が散らばる」、「家族がいないじゃん、で、病院というところにいました」、病人は、知らないところで、乾かされて、気の遠くなる、喘ぎや、溜息が、腑抜けた、音を、言葉に変えている、似ているものは、消滅で、夕暮れは、半開きにされ、途方もなく、遠くの、風に、吹かれて、咳き込む、ことも、あるのか、採寸されて、連行されていく、背骨は、いずれにしろ、風向きを、変えようとして、変な、釣り合いで、伸びて、いく、その、後ろ姿に、時間になった、光が、取り憑いて、黄色く、変色する頃には、十字架が、立つのか、卒塔婆になる、のか、美人の幽霊に、腰周りの、膝崩しの、辺りから、置換されている、「全然、頭、打ったことない人っているじゃない」、「頭から、落ちてるよ、必ず」、「だって、でかいんだもん、頭」、「大人になってから、打ってる人は、少ないけどね」、「バランスはね、膝なんか、いつも、片足だけ」、「大人になったら、片足だけ、できてないの」、「なんでだろう、子供の膝は」、「そうか、いつも、早く、膝ついてた」、「頭が、こう、ちょっと、凹んでるの」、「南米のマヤとか、エジプトとか、こう、後頭部、伸ばすみたいな」

アンテナが林立する、ウイルスの街、その原体験が、あらかじめ失われた空を、サーチライトが照らし続けて、いるのは、口述筆記された、手話の世界に、死んだはずの、白鯨が、打ち上げられて、酸素を蒸留している、のかも、しれない、「朝起きただけで、あれ? 私、誰? いつも、そんな感じになる」、「耳から落ちたんだ」、「ロボットが、パパって」、「朝起きて、もう、子供の頃も、外階段から落ちて」、「なんか、あとね、うちの二階の、窓から、隣まで、ロープ、張ったの」、「向こうから、ボール投げてもらったんだけど、友達と一緒に」、「段ボール箱作って、ロープの向こうから、よし、行くぞって」、「その後、ポンって」、「落ちた時に、どうしても、何が起きてるのか、わからなくて」、目玉は、目玉に覗かれている、その正体は、身体の中に、際限もなく墜落してくるものであって、なんの責任もない予感が、壊れた水晶体を外して、どんな想いで、そこにいるのか、窺い知れない、冷えた夜空に、重力の影が、置き忘れられている、「そこのテーマパーク、小さな宇宙人ファミリーっていうコーナーになってて、そこに、ほとんどの真実が書いてある、そういう小さな宇宙人ファミリー、今はいないけど」、「だいたいテレパシーで大丈夫です」、「ピーって言いますけど」、「その頭ですよ、腐ってくテレパシー」、「意外といい感じのセットで」、「カレーとトンカツが好きだって言うからカツカレーって知ってる?って訊いたら」、「知らない」、「カツカレー、最高じゃん」、「それはどこに行けば食べれるんですか?って」、「どこでも食べれる」、「ありがたみがすごい」、「選択肢が二つもあるから」、「どっちがまずくても感動できる」、「カツカレーだったら、カツカレーのジョン」、偽物に、置き換えられて、なにも、なかったように、前歯が、抜ける、その、後姿も、めりめり、白米を、喰らう、砂嚢に、消化されては、往く宛もない、他人の、背中で、遠くから、聞こえる、産声に、逃げ場もない、手袋を、二重に、嵌めて、摘出された、忘却の、鎖は、消される、でもなく、黒く、上塗りされる、だけで、孤立した、都市を、偽史が、跛行する、既に、消費されて、中心の、脱落した、円に、似てくる、そこに、猿がいれば、歌詞のない、舌を、持ち去ろうと、する、かもしれない、その、影を吸われた、正方形に、目薬でも、刺せば、焦点の合わない、光に、照らされる、ことも、ない、頭の弱い、朝焼けが、始まる、予兆である、そういえば、耳朶を、触られて、放心した、裸足の、子供の、夢の、過剰を、何等分すれば、いいのか、モザイクに、なった、頭頂に、静脈が、浮かび上がる、それを、待つ、しか、ない。

「集金って、何のこと?」、「あ、あの、あれです、老人会の」、「お、店員さん!」、「いや、できてるの?」、「あれは、消費税がつくので」、「開園式みたいなやつ?」、「そう、老人会の開園式で、行ってきました」、「なんとか、クリニックとか、振り込みじゃなくて、地下に行くんですよ」、「地下に行かなきゃなんないっていう、地下に行けば、金をもらえるの?」、「それで、行ったんです」、「で、やっぱり、お前と一緒に行ったら、オーラが違うって」、「書いてあった、オーラが違うって」、「違います」、雨に降られた、縁側から、立ちあがった、痴呆の、虹の、行方の、わからない、針の、穴に、通った、はずの、白い、糸を、辿れば、薄暗い、畳の上で、横になって、いるのは、病に、患って、いる、振りをした、風を、呼び込む、時間の、擬態になる、最後の、息の、吐かれてしまった、身体の、吸い殻を、不自由な、手指で、握ったり、開いたり、死なされて、いった、柩の、形の、虚弱に、透かされて、癇癪に、なる、それも、炎天下で、交尾している、二匹の、蝉ほどの、記憶でもない、水を掬えば、人相の、浮いてくる、洗面器の、表面の、柔らかい、膜の、張力の、鰓の、義眼の、抜き取られた、使い物に、ならない、顔の、速度だけが、魚の口を、して、釦を、掛け違えた、錯誤の、匂いが、どこに、行っても、腐りやすい、距離を、消息する、ニクロム線の、焦げた、光が、洩れる、窓の、裏側の、溶けてしまった、秘密の、影の、連結される、気配が、凪いで、半音を、微分する、糸なのか、紐なのか、行きずりの、手品師の、衰弱した、片足の、ふくらはぎに、全ての、方位が、書き込まれる、「尻尾から食べる派だな、首から食べる派じゃない」、「尻尾から食べるんですか?」、「頭じゃない、首やろ」、「あのー、ひよこ」、「頭から食うのと、首をもぎたいんだ」、「足ってないの?ひよこって」、「足とは何なのか」、「足は最初のよりも苦しんでないから大丈夫」、「頭から食うだろ、頭から食うに決まってる」、「首に何か変な物ついてたらガブっと食う」、「食いつくっていうのは普通なんじゃないですか」、「頭から食うに決まってる」、「何かわかってもできないから」、「でもね、お腹の膨らみは初ですよ」、「本当に全然わかんないんで、なんかすごく」、「お腹に膨らみがあるから、もしかしたらひよこが入ってるかもしんないけどガブっと食う」、「歯型つけるようにガブっと噛むのが新しい」、「もしかしたら似合ってるような気がする」、「ひよこも全部食いつくすみたいで」、「そんな可愛い噛み方、似合わない」、「もっと歯型をつける感じで」、「ああああああ」、「見せて噛むところ!」、「おいで」、「歯型がつくような噛み方しないと」、「やっぱりそれは舞踏としての噛み方として、なってない」、「わけがわかんない、舞踏なんかやってませんけど」、「やっぱり狂ってるんでしょうね」、「どこかで、でも正直だから、わからないって言うんだよ」、「いやー、分数を使わないところかな」、病人の近くで、異常に、伸びる、植物も、死んでしまっている、動物も、そこいらに、散らばっている、そんなところに、差し掛かると、変な身繕いをした、自殺した死骸のような色を浮かべて、昼間の方が、怪我人が出やすい、などという噂とか、諦めの先に諦めきれない、寂しさとか、乾燥すると、こうなるのだろう、大きないびきが、聞こえている。

「壊れかけの人が、壊れてるけど生きてる」、「これ体が冷える食べ物だよね」、「これも壊れてる」、「街を歩いてるの、老人しかいないし」、「小人の若者かもよ」、「目からブロッコリーが出てきた、本当に」、「そうか」、「今でも、やっぱり、楽なんだよな」、「その方が安く上がるんだよ」、「結局は時間を使いたくないから、それをどう使うかね」、「順番を使うんだ、って言われます」、「あとで、お薬の説明を書いておきますね」、「それぞれに目印をつけたり、ラインマーカー引いてね」、「電波病も進行が早くて、どんどんテレパシーがダメになってるから、回復しても、みんな、できるようには、なんないって」、「細いやつすごい」、「ガリガリ、さすが何万人かにひとりの機械みたいな」、「汚れてるのがいい、俺一回死んでた、なんかもう、あれはないな、前もってわざと汚してた」、「赤ちゃんみたい」、「赤ちゃんに戻って、考えればいいのかもしれませんけど」、「なるほど、だから、おむつ履くしかないだろうし」、「うわー食べるね」、「そうなんだよ」、目には見えない、色情が、茹だるような冬は、穴のような吸い口を持っていて、もしかして、その人たちは、気味の悪いほど、生きることに、なって、ただ、それだけの人として、そこにあるのだが、自分の口から出る喘ぎを、安易と教えている人にも、見えてくる、そのせいか、粘ついていた影に隠れて、そんな昼間どきに、屋根裏から、もそもそ降りてくる人がいて、その人は今、そこで、何をしていたのか、まるっきり見当がつかない怖さを、身に纏っていた、なんだか、空の蛇口が膀胱炎を患っている身体に、なってしまっている、花まで腐らしたような、雰囲気がそこにはあって、医学の技術に攫われた人のように、眼帯をつけた女が、病院を出入りして、背骨まで乾いたような大人が、光の中に立って、その人の周りでは、摩擦する空気が、震えて、歌っているようである、「舌が何となく横に伸びてくる、この人だけでしょ」、「いや、そうじゃなくて、舌をやる人だからって」、「舌をやる人、気持ち悪い」、「舌をやる人じゃない」、「めちゃくちゃ気持ち悪いよ」、「何がですか?」、「舌をやる人じゃない?」、「これがおやつです」、「どう?」、「嬉しいな」、「めっちゃ、狂ってる」、「かなり、つーか」、「顔だけなんかこう、なんかぶっ壊したの?」、「お前、顔が眩しくてさ、受け取ったら?」、よく伸びる、舌で、後ろから、女性の、襟足を、舐めている、気配も、振り向かれて、それを、口の中に、巻き込む、速さも、雨が降れば、計算違いの、生首が、橋の欄干に、並べられて、頭には、重い雨が、叩きつけている、その、架空の磁石が、回り続けて、いるのは、稲妻が、落ちる、前兆かも、しれない、魚を咥えて、川から上がってきた、着物の、後ろ前が、反対の、男が、胴付きの雨靴を、片方ずつ、外し始めると、やはり、足は、二本もいらないらしい、その、ぶちまけられた、魚を、並べられた、生首の、口に、突っ込んで、そのうちの、どこか、見覚えのある、女性の首を、懐に隠して、消えてしまった、雨犬、ここあたりでは、そう呼ばれる、水生動物の類かも、しれない、眼圧の高い、外側に、閉じられた、股間で、メニエル病の、女が、偽史を生きているのなら、噛み合わせの悪い、歯で、異常な性感を感じる、不合理な、唇も、それなりに、持ち去られても、おかしくはない。